そもそも「SIM」って何?

携帯電話の話の中に必ずと言っていいほど登場する「SIM」。
周りが使ってるから何となく分かっている振りをしていたり、正直理解せずにこの言葉を使っている方もいるのではないでしょうか?
最近では「格安SIM」という言葉もよく耳にしますが、「SIM」って一体全体何ものなのでしょうか?
についてお話ししたいと思います。

SIMカードとは

皆さんが耳にする「SIM」。見出しの写真に添付されているICチップの付いたカードのことを言います。
英語で「Subscriber Identity Module Card」と呼ばれ、そのイニシャルを取って「SIMカード」と言います。一般的にはさらに略して「SIM」と呼ぶ機会の方が多いですね。
昔の携帯は、写真の一番外側の大きさのカードでしたが、昨今のiPhoneなどは一番内側のほぼICチップのサイズのカードとなっています。

一昔前のガラケーから今のスマホまで変わらず使われている「SIM」。さて、実際何をしてくれてるものなのでしょうか?

ずばり、電話番号が記録されているだけです。

皆様が月々支払っている携帯料金は、実はこの「SIM」のために払っているのです。

携帯ショップにお任せの方は知らない方も多いかもしれませんが、例えばiPhoneを新しいバージョンに買い換えた場合、古いiPhoneから「SIM」を抜いて新しいiPhoneに挿すだけで、電話番号は移行できます。
電話番号の移行だけであれば「SIM」を挿し替えるだけでいいのです。
実際はアプリなどのバックアップ作業が必要となるので、その移行作業が大変なのですが…

最近はそのまま下取りに出す方が多いとは思いますが、「SIM」が抜かれた古いiPhoneも、4Gの通信が使えないだけでWi-Fi環境下であればこれまで通り普通に使えます。

大手3大キャリアの囲い込み:「SIMロック」

あれ?それなら、他のキャリアに乗り換えるなら「SIM」を手に入れて挿し替えればいいの?
と思いがちですが、日本の携帯電話は「SIMロック」という罠が仕掛けてあり、ドコモで購入した携帯電話はドコモのみ、ソフトバンクとauも同様にそれぞれのキャリアの「SIM」しか認識しないようになっているのです。
素晴らしい罠ですね。一度付いたユーザーを手放したくないという表れですね。
利用する側も、色々手続きが大変だからと最初に契約したキャリアを継続する流れに引きずり込まれている状態なのです。

この「SIMロック」。総務省では以前より問題視されており、携帯電話乗り換えの障壁と考えられてきました。確かに、乗り換えがないと価格競争も起きづらく、各キャリアもお高いプランを維持したままになりかねません。

総務省のホームページにスイッチング円滑化タスクフォースという電気通信市場検証会議の資料があります。
そこでは「SIMロック」について議論されており、2015年には「SIMロック」の「解除」義務付け。そして、2021年10月からは「SIMロック」原則禁止となることが決まっています。

詳しくはこちらのサイトを参照ください。

さて、どうして総務省がここまで力を入れているかというと、

日本の携帯料金が海外と比べてべらぼうに高かったからです。

今や日常的に様々なことに使われる携帯電話、電気・ガス・水道と同じく生活必需品として光熱費の一部と言ってもいい位置付けにあります。
電気も自由化が始まり、様々な会社が提供するようになり価格競争が起きています。
携帯電話もそういう時代にようやく突入したと言えるでしょう。

「格安SIM」:MVNO事業って何?

そして、最近よく聞く「格安SIM」ですが、これは一体何でしょう?

正式には仮想移動体通信事業者(Mobile Virtual Network Operator)、略して「MVNO事業」と呼ばれており、無線通信回線設備を開設・運用せずに、自社ブランドで携帯電話などのサービスを行う事業者のことです。
一方で、ドコモなどの3大キャリアは移動体通信事業者(Mobile Network Operator)、略して「MNO」と呼ばれています。

簡単にいうと、「MVNO」は「MNO」から電波を借りてサービスを提供している。ということです。

3大キャリアと比較して低価格プランを売りにしていることから「格安SIM」と呼ばれることが多いです。

この「MVNO事業」。まだまだ認知度が低く利用者も少ないため「使い勝手はどうなの?」「電波弱いんじゃないの?」というユーザーの不安が拭いきれていない現状もあります。
また、極端に安いプランは通信量が3GB程度に設定されており、家の中で引きこもってWi-Fiだけ使っている人くらいしか使い物にならない実情もあったりします。

とはいっても、総務省としては「MVNO事業」が参入しやすい環境を整えて価格競争により携帯電話料金を引き下げる狙いがあるため、今後はこの「MVNO事業」が携帯電話の主力になっていくことが予想されます。

「SIMロック禁止」は、そのための第一歩ですね。

簡単な筈なのに面倒臭い作業:「SIMロック解除」

「SIMロック禁止」となるのはもう少し先ですが、現状「SIMロック解除」も拒否権がないので、希望者は解除できます。
が、この作業が非常に分かりにくいのです。
各3大キャリアからみると、「SIMロック解除」=「去りゆく者」なので、ホームページも検索掛けないと辿り着けないような奥深くに記載されていたりします。
そこで挫折した人達は、それぞれのショップに行く訳ですが、その場合有償対応になるのです。

結果、「色々面倒だから、今のままでいいや」と諦めさせる囲い込みになっているのが現状なのです。
これも「MVNO」へのユーザー移行の障壁と言われています。

当たり前が当たり前じゃなくなる時代

今では収入の高低に関わらず、皆さん当たり前に携帯電話を持っている時代です。
ガラケーからスマホになり、より日常生活に入り込んで当たり前になっています。
その一方で、3大キャリアにお高い使用料を払って使うのも当たり前になっています。

当たり前すぎて、気にしない人は疑問すら持たなかったと思います。
しかし、時代は動いていて、国もその当たり前を壊そうとしています。

思えば、ドコモがもmovaからFOMAに移行するときも、初期の頃はFOMAの電波が不安定でmovaが当たり前でした。しかし、時が流れてFOMAが当たり前の時代がきました。

ガラケーからスマホに移行する時も同様に、ガラケーが当たり前だった時代からスマホが当たり前になりました。
今ではガラケーが時代遅れと言われたりもしますね。

次は「SIM」の当たり前が変わろうとしています。時代というのは常に進行しているので、取り残されないようにしたいですね。